心象風景三 アカラシマの祈り/田中修子
穏やかな海は荒れ果てた
銀や青の魚は散った
赤の珊瑚はま白な海の骨に
ただ海猫だけが一匹
あなたの上にニャーオニャーオ、と舞い
わたしは海のあなたをあとにした
泣き叫び 垂れ流しながら
4.
アカラシマの首はいま
獣の手に預けられている
いつでもひねっておしまいをくれるように
獣の、いっけん滑稽のように細く
その実は全てひきしまった筋肉の体に
わたしは欲をする
さまざまな世界の穢れを旅し
そのなかでわたしを選ぶという獣よ
アカラシマを愛し続けると誓うきみよ
きみも立派なものぐるいさ
わたし、いつか、きみ、
5.
それでも火の獣のささやきでは
アカラシマのわたしの中は
いま 春のかわいらしい花が 咲き乱れているという
美しい蝶が夢のように舞っている
そのひとひら ひとひらを 綺麗だなぁって
少女のわたしがほほ笑んでいる
足りているものをかぞえれば
天の星よりなお多く
アカラシマは
ただ
祈る
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