心象風景三 アカラシマの祈り/田中修子
 
1.
いつから
足りていないものばかりを
指折り数えて呪い

2.
消え入りそうな風のわたしは
どっしりとした海のあなたに安らいで
ゆるり 守られ
はじめて 安息し
ながいながい淡桃色のまどろみのあいだ
白いさざ波を数えながら
海猫と戯れ
いつか微笑むようになり
おなかを抱えて笑うようになり

いつかパンと正気がはじけ
天に届くように哄笑した
止まらぬ咳のように笑いつづけた

巫女が舞うさまからできた笑うという字は
幸福にすぎたわたしを

ものぐるいにした

3.
ものぐるいのわたしの舞いは天にとどいて
いまわたしはアカラシマ 暴風だ


[次のページ]
戻る   Point(5)