うみのほね/田中修子
 
ます。顔写真が一瞬映し出された。李、だった。
画面がノイズになった。

 私は立ち上がる。足に力が入らない。世界を遠く感じる。精液をあたりに放射し満足げな体育の教師のところまで行って、先ほどのリー……はこの中学校出身の李ではありませんよね? 登校拒否をしていた李ではありませんよね? 体育教師は笑う。私は座り込む。ふわふわのドレスの裾が広がる。違いますよね?

 確かにさっきのはうちの学年の李だったなぁ。

 ぐしゃりという音がした。世界は手のひらに握りつぶされた。
 李は喧嘩が強かった。まるで楽しむように、生きるように、殴られては殴り返し、相手を負かしては、ガラスで相手を切り裂いて笑っていた。そして、今度は彼が切り裂かれたのだ。そのとき、彼はどんな顔をしたのだろう。なぜだか、笑っている顔しか思い出せない。
 泣きたくて口をあけたのに空気が来なくて涙が出なかった。私は水平線を思い出す。私たちはすでに悲しいのも苦しいのも一周して、きれいな薄紫の夜明けの中に、さらさらした海岸の砂のようになってしまったのだ。
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