うみのほね/田中修子
 
ことを思った。あなたならこの人たちを殺せる? 殺せるだろう。今すぐ来て、殺してやって。
 私は窓の方に体を寄せた。そこにはかつて親しかったかもしれない女の子がいた。彼女は窓の外を指差す。
「綺麗なへび座ね」
 空はもう真っ暗だった。ビルの明かりや、流れていく車のヘッドライト、信号、すべてが輝いて街の線を形作っている。そして、空にはコブラが長々と横たわっている。光の洪水だ。目の周りは赤く、体は橙と青で、一つ一つがちらちらと真っ黒い空を背景に瞬いている。
「へび座がこんなにはっきり見えたのははじめて。今日は何かあるのかしらね」
桜の散ったピンクの着物を着た彼女はそう呟く。雲が晴れて、となりに
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