棄てられたモノローグたち/宣井龍人
 
足跡などは何もなかった
踏みつけたのは幾人かの苦しみや悲しみ
私は私で多くの人々に踏みつけられている
それらの人々はまたより多くの人々に踏みつけられている
たぶん幸せは数えきれない苦しみや悲しみの上に咲くのだろう
だが頭上はるか高く自由に飛び回るのは無数の鳥たちであった

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見渡す限り子供達がいません
屋根裏にも床下にもいません
じいさんばあさんばかりです
お互いのしわはお互いの鏡です
奥歯に物が挟まった同じ顔です
笑い声は一足先に納棺しました
私も名も無い塵達のひとりです

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長方形や正方形や三角形
汗をかき苦しげに転がっている
床に着くと彼らは夢見るのだ
明日はまるくな〜れ


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