12月の雨の下/mizunomadoka
買い手のつかない
あの家のガレージに
クリスマスツリーが眠ってる
誰も開けない
シャッターの内側の
冷たく積まれた
スタッドレスタイヤの横で
去年の飾り付けのまま
彼女はライトを消して
滲んだ電飾を見つめる
それから短く息を吐いて
車を降りる
鍵を開け
シャッターを持ち上げると
かすかに砂埃が舞う
クリスマスツリーはなかった
彼が持ち出したのだ
娘のために
ポツンと置かれた工具箱の上で
折り鶴が息絶えてる
ずっと幸せでありますように
なんて願ったから
ジングルベル
ジングルベル
雪が白いのは
雨と見分けるためよ
彼女は歌いながら
車に戻る
ガレージをちゃんと閉めなかった
雪から逃げる獣が
寒さをしのげるように
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