散る/田中修子
 
お母さんがわたしを
おなかに宿したとき

ピンクや赤や白の花が
見渡す限り一面に
あまぁくあまぁくかおって揺れる
夢をいく晩もくりかえしたよ

だから
しらべなくとも
わたしが女の子だと分かったそうです

いま、わたしの垂らす蜜は
赤い鉄のようなかおりがするそうよ

淡い花のようで這い虫なんか
気付かぬうちにむしゃむしゃ喰ろうて
ドロドロの養分にしてしまう

這い虫溶かすなんて
詰らなくって

わたしの花海原を駆け抜ける
しなやかな獣の足もとに
パッと散らばり
笑いながら飾りたい

獣に踏みしだかれたわたしはきっと
とろんとして

散る 散る そう 散る
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