短詩2篇/白島真
 
「笹舟」

ほそくふるえる茎をくわえて吹いてみた
ちいさいころの夕焼けが鳴った
百日紅(さるすべり)のあった空き地
少年探偵団のぼくが落とした時間
材木屋のある路地は行き止まり
ふたごの姉妹の尾行はあきらめた
突然の電動カンナの音に若木たちは逃げ
ふたりで編んだ笹舟は
いつもつかえてとまってた



「空」

空が炎える
戦火のない眩ゆさを
ひとは求めているはずなのに
空が炎える
深紅をうつろい染めて
残雪はうつくしい花の体温に溶けて


炎える空は
だれのものですか
うすい花弁は
雪の重さで散りますか


一発の銃声がこころを砕き
温かい指先で だれが
だれが深紅の薄氷を掬いとりますか


戻る   Point(24)