またね!/もっぷ
 
珍しくわがままらしきことを控え目に切り出したこの日の夕食の席で、すぐに妻とうなずきあって、夕陽にほほえんでみせた。夕陽ははにかみながらも「うん、ありがとね、父さん、母さん」そう言ってあとは普段通りの食卓にもどる。このあたりまえの家族の食事の時間や空間を知らないこどもたち、しかも……新聞の記事を思い返しながら、また、これまで聞き流していたかのようなニュースも気づかないうちに耳に残っていたらしい、それらが、抵抗すら知らないこどもたちのことが、その夜の妻との、心をしめつけられる話題となっていた。妻が「もし夕陽と朝陽がいなかったら、私たち、そんなこどもたちの一人でもを助けることもできたのかしらね」ため息と
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