またね!/もっぷ
 
少し傾げると、いつの間にか店に戻っていた父の、老いてはいても「まだまだ」とでも言いたげな二つの瞳が私の顔を覗き込んでいた。瞬時に前後の状況を把握できるだけの?大人?になっていた私は、体を起こして、まず、経営者である父に不覚を詫びる。父は黙ったまま何も問わずに静かにほほえみ、利き手である右手をこちらに伸ばすと、私の髪を二度もくしゃくしゃにした。臨時休業の件については二人とも触れず、妻たちに特に知らせるべきことでもないと自らで判断した私は、いつもの帰宅時間までをそのまま、客席で毛布に包まったまま父と二人で言葉少なに過ごした。

 夕陽が「紹介したいひとがいる」と言って、土曜日か日曜日は無理かと珍し
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