ピリー、僕にその紙束を一つよこせ。こどもが花をちぎるような仕草で。/竜門勇気
 

8月が始まる頃の欲望は
冷めた満月みたいに膨らんでる
飲み込もうとしたって
変に甘くって
吐き気がして痩せちまいそうだよ

ギターの弦を巻き直そうとしてるんだ
なにもかもがでたらめになってるって気づいたから
風がびゅうびゅう鼻水をひっぱる
でたらめはもう、僕の一部みたいだ

消えかけた火をもう一度
柔らかい言葉で灯そうとした
焦げた紙くずが舞い上がる
なぜこんなところにいるんだろう

ギターの弦を巻き直そうとして
なにもかもでたらめになればいい
汗が涙が枯れ果てたあと
絶望が残るならもう、答えが出たってことだ

流れる匂いを探してた
さっきまでよりまともだぜ
まともの果てに何が有るんだろう
強さの獲得は自覚を手放すんだろう

消えかけた火をもう一度
触れかけた日をもう一度
残ったまともに絶望を

世界を旅するために
なくすために
石鹸の匂いのする絶望を

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