レモンジュース・ダイアリー(2)/由比良 倖
零度の髪が一瞬ふわっと揺れて頬がうっすらと黄色く照らされた。中は見ていないみたいだった。冷蔵庫から目を反らして私の方を向きながら、するりとジュースの缶を出した。「これしか無いみたいです」と言って、それを私に投げて渡した。
零度の方は何も取らずに、またベッドに戻って踞り、壁に頭を凭せ掛けた。
「寒いですね。今日はまるで…」
「まるで?」
「まるで誰かの命日みたいです」
そう言って鼻を鳴らした。私はジュースの缶をデスクに乗せて、撫でた。ジュースの中身とデスクの滑らかさは私を安心させるようでいて、それは遠くにあるようにも思えた。Yは。Yは仕事が捗っているだろうか?
零度は私が何も持っていない
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)