レモンジュース・ダイアリー(2)/由比良 倖
ないことで、私にはもう興味を無くしたようだった。睡いんですよ、と言うように、瞬きをしながら段々目を開けている時間の方が少なくなった。ジュースの缶は空気中の水分を奪って、表面に冷たい汗を浮かばせていた。
「…そう言えばですね、透子さん」
零度の声が私の思考に直接揺らぐように響いた。
「そう言えば僕、彼を見ました」
私は少し息が苦しくなった。煙草を持ってこなかったことを後悔した。どこで? と訊きたかったけれど、零度はもう横を向いて、完全に目を瞑っていた。
「…でもそれは悪い夢だったかも知れません」
私は、そう、と言って零度に別れを告げて、もときた道を歩いた。途中、上から漏れてきた水を、その
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