心象風景二 きみとわたしと/田中修子
1.
色のない空をつんざくようにそびえたつ黒い山脈
真っ黒焦げになった数万の人々が
フライパンの上ゴウゴウと炒られて悲鳴をあげていて
それをしている巨人もまた
焼き爛れて狂って笑いながら
泣いている
数万の人々がわたしで
巨人は母だ
2.
炎を頬に感じながら悲惨の脇をとおりすぎ
黒い山脈を越える
月明りで歩ける浜辺
静謐をたたえる海
さざ波が白く
わたしは焦げたからだを引きずって
(そう、お化けのように
皮膚がつりさがる腕を前に突き出しながら)
ミズガホシイと海に沈む
なめらかになるからだ
深く 深くへ
銀の青の魚の影
赤い珊瑚や
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