左手からオアシス/為平 澪
 
魂が彼女の肉体を超えているのに 
なぜ人は彼女の囲いばかり 目にして嗤うのか 
動かない右手に握り拳を置いて 左手で書いた文字より黒いのは 
右手がやすやすと動く人たちの、コトバ 
自由とはとても高みにある悦びと同じくらいの不確かな不安だと、 
空に消えいく白い鳥のような覚悟を あなたは羽ばたかせる 
あなたを子供に向き合わせたもの 
昭和の赤いチューリップ、かごめかごめの籠の鳥、うつむく子供や 
古びたギター音、黄ばんだピックを持った男の背中や唇 
車椅子の上はいつも晴れ渡って 寂しい自由が乗せられているのに 
あなたの頭を叩く人、あなたの頭を押さえる人、 
生
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