釦/為平 澪
天花粉の丸い小箱にはいっていたのは
祖母や母が立ち切狭で廃品回収に出す前に
切り取った釦
鼈甲仕立ての高価なものもあれば
校章入りの錆びた金釦や
普段使いのプラスチック釦
そして
焦げて曲ってしまった玉虫色の婦人服の釦
けれど
三つとして同じ種類のものはなかった
少し埃立つ畳の部屋へと斜陽が、
僅かな障子の隙間を潜って私と手のひらの上にある釦を射る。
厚地のコートについてたであろう変色した重々しい大きな釦、
その穴を庭先に向けて内から覗いてみる。
この家に嫁いできて、主や子供たちの釦を、
そっと切り取ってここに残してきた女たち。
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