立ち尽くす/六九郎
人気の消えた深夜の通り
明滅する信号機
その下のアスファルトには
まだ昼間の少女の叫び声が
染みこんだまま
涙の滴とともに
冷えていく
少女は泣き疲れて眠る
冷たい蒲団にくるまって
夢の中で
声を立てて笑う
温かな光に包まれて
いつもそうだったように
これから朝が来る度に
光は引き裂かれる
もう少女には
温かな朝は来ない
冷たい蒲団の中で
見開いた
少女の
凍った瞳
毎日は進んでいく
次の日も
また次の日も
そのまた次の日も
少女一人そこに残したまま
テレビも
ネットも
マンガも
ゲームも
本も
何もかもが
記憶を呼び覚ます
今は夢だけが
少女に残された
唯一のフィクションになる
全てのフィクションが
自分の無力さに
うなだれて
立ち尽くしている
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