カナリアのかなしみ/白糸雅樹
 
横たわる詩人に砂を投げ入れよテロリストのかなしみ知らぬなら

閃光のあとに残りしひとがたが刻まれており道路の上に

欠落を埋めないこと背を伸ばしカクテルグラスごしの詩の文字

血のにじむ指くわえようとするあなたから手をひっこめるさびしみがある 

石を打つその青年の手元から剥離してゆくひとひらひとひら

暗い眼で見据えられても動じない回転寿司の皿の行進

枯れないで僕の窓辺に棲むキリンふぃるむがみな黒くなっても

なだれうつうたに嫉妬をそそられてきょうもみそひともじを削りぬ

風呂の湯はたぎりてゆきぬ空薬缶ぐわらんぐわらん叩いておれば

わたくしを皮膚の下から噛み開くものの蠕動午後の静寂

自爆テロ現場に残る指先の紅あざやかに風を掴みぬ

ぺらぺらのからだを風にもてあまし凧の糸すじわたしは欲しい

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