お見送り/六九郎
私は首まで河に浸かり、流されないように両手で木の枠にしがみつく。
河の中から、集まってくれたみんなの顔を見上げる。
喪服姿の人の群れの真ん中には妻と子らの姿。
懐かしい顔も多いが、知らない顔もある。
私のために泣いてくれているのか、ハンカチを眼に当てている人も見える。
岸の上から涙や鼻汁を吸ったティッシュがぽとぽとと降ってくる。
白い蓮の花のように咲いたティッシュが、いくつもいくつも、私の目の前をゆらゆらと揺れながら緩やかに河を下っていく。
空のペットボトル、古タイヤ、犬の死骸、壊れた仏像、破れた熊、邪魔になったソファ、古新聞、昔のアルバム、役に立たない過去問、もう着ない去年の服、使
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