親愛なる祖母へ/卯左飛四
 
腰痛いし、もうどこへも行きたくないから
笑ってたけど、本当は旅行好きなの知ってたよ
「おばあちゃんね、お花が大好きなの
どこへも行けないから、こうしてきれいなお花の写真を見てるの
ちっとも飽きないのよ」
何度も読んで擦り切れた、一冊の薄っぺらな雑誌
頁をめくるたびに、小さくなった目をさらに細める
「なんだ、花の本なんていくらでもあるよ
もっとたくさん載ってるやつ、今度買ってきてあげるよ」
安易な約束、薄情者の孫はそれっきり忘れて
彼女は読みたい本すら、もう自分では買いに行けなかったのに

気丈で頑固な明治女
淋しいとか悔しいなんて、一言だって言わなかったけど
あたしが出
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