汐風/草野春心
 


  瞼のなかの海で
  灯りをつらね 夜船がとおくなる
  汐風がしろい帆を滑らかに膨らませ
  幼子のような波音をしまいこんで微笑う

  わたしたちは魂の此方側に立っている
  動かない時の中に開いた銀の花火のような
  ぼろぼろの月が 遥かな所からひかっている
  また、汐風が 幾重にもわたしたちを閉ざしていく


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