待ちぼうけの煮物たち/りゅうのあくび
 
明日の朝餉で
煮物たちは
ついに食べられるつもりです
かぼちゃの君は
セミロング気味に散髪され
さらりと初冬の乾いた風になびかせ
そっと魔法の馬車馬が走り出す
だいこんの僕は
降りしきる初雪がとても名残惜しく
三島由紀夫が記した金閣寺が
燃える小説のなかで
ふと炎の本質を想い出す

勿論のこと煮物は
煮物の素材だけで成り立たない
お互いの運命と宿命の辻褄を合わせる
かぼちゃの君とだいこんの僕は
近所の八百屋で支払う銭の計算をする
日溜まりにある遠い朝を
迎える鍋のなかで
小さな炎の加減をする
熱い風呂で煮えながら
ゆったりして
ほっと吐息を
かけられ
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