秋の想い出/レタス
昔出逢ったことが
はっきり見えるよ
昔見つめ合ったことを
はっきり覚えているよ
秋の春楡の大樹の根元に佇んだ君は
静かに頬笑んでいたね
ぼくは紅くなったヒメマスの遡上を眺めながら
秋の日を過ごしていたね
忘れかけた
その歌が
いまはもう
聴けなくなっている
あの頃は
激しくて
とても激しくて
二人抱き合うことしかなかったね
いまは何もいう事もなくて
ぼくは新聞に眼を落とし
君の鼻歌を聴いている
何時もの静かな朝を迎えられるのは
あの日があったからなんだ
泣きたくて
笑いたくて
独り珈琲を啜る
戻る 編 削 Point(4)