秋の想い出/レタス
 
昔出逢ったことが
はっきり見えるよ

昔見つめ合ったことを
はっきり覚えているよ

秋の春楡の大樹の根元に佇んだ君は
静かに頬笑んでいたね

ぼくは紅くなったヒメマスの遡上を眺めながら
秋の日を過ごしていたね

忘れかけた
その歌が
いまはもう
聴けなくなっている

あの頃は
激しくて
とても激しくて

二人抱き合うことしかなかったね

いまは何もいう事もなくて
ぼくは新聞に眼を落とし
君の鼻歌を聴いている

何時もの静かな朝を迎えられるのは
あの日があったからなんだ
泣きたくて
笑いたくて

独り珈琲を啜る



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