『咲いていた』/葉月 祐
咲いていた
そう ただのヒトとして
並木道に列を成して
幾度と無く人々に
季節の到来を告げてきた
今は黄金色に染まりきった木々と共に
花は秋風に優しく揺れている
青空を再び覗かせた
深みを増した空の下で
私は風に揺れる事も無く
雨に打たれて くっきりとした
自分の輪郭を感じとっていた
雨を吸い込み
凝縮された自然の空気と
雨に流され 残った
ヒト自身の確かな匂い
人工的な香りはすっかり洗い落とされた
残された
力強く独特である
そのすべてを
この身に纏うようにして
何度でも私は 私というヒトの花を咲かせるだろう
真の姿のまま ここに立ち 命のままに咲き誇るだけだ
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