『咲いていた』/葉月 祐
雨上がりに
名前も知らない花が
芯まで濡れながら
凛と咲いていた
雨の匂いは
濡れた土や
草花の匂いを
際立たせている
木々は細かい秋雨を
その全身に受け
むせ返る程の
季節の木々と葉の匂いを
あたりに充満させた
久しぶりにつけたはずの
お気に入りの香水は
数分間 雨を身に受けると
あっという間に
その香りを失ってしまった
シャンプーやボディソープ
柔軟剤の微かな匂いまでも
すべて雨に染まる
私は身につけていた
様々な香りを失いながら
まるで自然の一部となり そこに溶け込んでいくようだった
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