白猫語り/為平 澪
 
母猫が事故死して母乳の味を覚えることなく、 
共に産まれた兄妹が運ばれた行方も知らず、 
ただ何となく頭を撫でてくれる手を信じて、 
呼びかけてくれる瞳の輝きに返事して、 
春はご主人様たちとよく眠り、 
夏に目覚め、秋には遊び、 
冬に外の景色をじっと眺める。 
そんな日々の中で、 
一人いなくなり、二人いなくなり、 
長生きすればするほど優しい手のひらたちの 
温度が失われていくのに、 
アタシだけ、白く、生き残りました。 
明日、雪遊びに行きます。 
白く埋もれて眠る毛のささくれた猫を見たら 
踏みつぶさないで「よく頑張ったね」って、 
ひとこと声を被せてください。 
        ※ 
(独りでも天国に行けそうな気がします) 
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