『お菓子をくれなきゃ』/葉月 祐
狭い夜にいつまでも耳鳴りに似た静寂が居座って
私は緩やかな速度で平衡感覚を失っていく
何も無い訳ではないのに何も掴めないこの手には
言葉にもしたくない汚れだけがこびりついている
不幸自慢なんて人生をさみしく彩るような事はしない
ただ今は感情のネジが抜け落ちて箱が大口を開けているだけ
それは時期的にもハロウィンのジャック・オ・ランタンみたいで
いっそ面白そうじゃないかって思っているよ
中身を限界までくり抜いたカボチャみたいに
口角を吊り上げてこの箱を笑わせてやりたくて
自分も無理矢理それを真似てみるけれど
やはりそれも
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