金の歯に熟れ柿/
田中修子
箱をあけたら金にひかる歯がころり
うるといい値になるそうだ
しゃれこうべしゅうしゅうと
お墓の下でなげいとりゃせんかしら
おれの歯ぁどっかいったぁって虫食い歯でさ
男かしら女かしら
きっと因業もんだったのさ
生きるということはそのまま収容所みたいなもんか
体に霜がおりそうな雨の日だこと
父がくれたじゅくじゅくに熟れた柿を吸う
しみるわたしのやすっぽいつめものの歯は
きっとなんにものこさずきえる
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