金の歯に熟れ柿/田中修子
 
箱をあけたら金にひかる歯がころり
うるといい値になるそうだ

しゃれこうべしゅうしゅうと
お墓の下でなげいとりゃせんかしら
おれの歯ぁどっかいったぁって虫食い歯でさ
男かしら女かしら
きっと因業もんだったのさ

生きるということはそのまま収容所みたいなもんか
体に霜がおりそうな雨の日だこと

父がくれたじゅくじゅくに熟れた柿を吸う
しみるわたしのやすっぽいつめものの歯は
きっとなんにものこさずきえる
戻る   Point(5)