病棟/TAT
 
パジャマのポケットからライターを取り出すのだった
その三十代後半の男は二十代のカップルを従えていて
ここ分かりづらかったやろお?とか
ストーブ近付けえなミキちゃんとか言いながら
まるで自分の豪邸に来たゲストを饗するかのような振る舞いで

実に気持ち悪かった


おそらくは同僚なのだろう
職場の先輩(上司?)を
見舞いに来たのだろう




冬の午後に






おどおどと気遣いの口上を並べながら
何だか異様に居心地の悪そうなカップルを不思議がって横目で観察していると
不意に気付いた事があって



そうかそういえばこの男は
さっき廊下に
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