流世の語り/半知半能
人類が滅びて久しい荒野の中心
ぽつりと浮かんだ吹き出しに
最後の最後にだれかが書き込んだ言葉は風化して
そこに霞んだ消え残りが歌うのは
何だったか
今では誰も読むことは叶わないがただ
貧相な鼠が
記憶の猫に殺されて
ここにたどり着いた時には
ほんの一粒の涙を流した
鋭角な風が吹くこの野には何かが足りない
何かが足りないのだ
それは一筋の小川だった
それは一群の花だった
否、それは一射しの陽光だ
人々は嘆いた
何故我々は救われないのか
何故我々に休息はないのか
一握りの幸福さえ永遠の二字には儚くも遠く及ばない
明日という言葉ほど悲しみを誘うものは無かった
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