こわれる/竹節一二三
 
ころんで傷ついた膝に
消毒液をふきかける
わたしの鉄でできたからだは
それだけで うごかなくなる

すき きらい を
判別できない指先の半月
ことば おと を
区別できない壊れた右耳

循環のために
めまいは常にわたしのそばにあり
誰かのかすかな一言に
わたしのねじははずされてゆく

右耳にひゅうんと風の音が聞こえる
左耳で聞くとさよならという音
わたしのからだは跳ねて
そのさよならを迎撃する

ろうそくの最後の炎のように
戻る   Point(4)