絶句/ヒヤシンス
 

 見えない魂という奴を心の奥底からそっと取り出してみた。
 どこかに傷がついていないか僕は念入りに確かめた。
 どうやら傷だらけですな、主治医がそう言った。
 僕はどこにそんな傷があるのかと少し訝しがった。

 これはもう何年も前に失恋した時の傷。
 これは勤め先で上司と部下の板挟みにあった時の傷。
 これは病がひどくなって妻や子と別れた時の傷。
 これはまあその他諸々の傷ですな。

 主治医は僕の魂を薬漬けにした。
 僕はほとんど自覚のないまま泣いていた。
 僕は何一つ自分の魂の傷に気が付かなかった。

 それから七年の月日がたった。
 僕は再び魂という奴を取り出してみた。
 主治医が言った、あなたの魂は完治不能です。
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