真実の在り処/ヒヤシンス
 

 真夜中の幻燈に真昼の幻想を見る者が一人。
 彼は懐かしさの中に真実を探ろうとしている。
 ぼんやりと宙に浮かぶ光景は全てが琥珀色で
 真実の色さえ隠してしまう。

 誰もいないアトリエ兼応接間に真夜中の夢は潜んでいる。
 眠りにつこうとするがそれが出来ない。
 脱ぎ捨てたコートに昼間の雑念が染みついているからだ。
 真昼の幻想の中に夢の甘美さを持ち込むことなど出来はしない。

 途方に暮れる彼は現実の中で草原を夢見る。
 地平線に暮れる夕日を夢見る。
 そうして濃紫色に染まる朝の気配を感じる。

 新しい今日が始まるともうすぐそこに幻がやって来る。
 彼はそこで朧な夢を密かに見るのだ。
 そしてこの世の真実はすぐそこに在ることを知る。
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