天使強盗/やまうちあつし
ある朝
川沿いの道を歩いていると
天使が倒れていた
両のてのひらに
すっぽりおさまるくらいの
白い衣の泥を払って
一応、家へ連れ帰ることにした
ミルクを温め口にふくませると
天使の頬に赤みが戻る
テレビでは
どこかの国の乱痴気騒ぎ
大きなスポーツの
イベントがあるらしい
天使は時折
そちらを気にしながら
ミルクを残さず飲み終える
いつのまにかすやすや眠っている
私は自分が着ていたカーディガンを
小さな体にかけてやり
時計を見る
そろそろ出かける時刻
今日は銀行強盗に
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