愛言葉/やまうちあつし
 
うれしい言葉だけおぼえているように
心身をむしばむくだらないやり取りや
こずるい軽口の数々は
聞かれるそばから次々と消えてゆくように
心の谷底に
大きな口をした動物が
いつもいるように
いつもお腹を減らしているように
嫌な言葉の数々を
いくらでも飲み込んでしまえるように
その胃袋が常に健康であるように
わたしの言葉に羽が生えますように
いろいろな線路や山脈を越えてゆくように
取るに足らない溜まり場は素通りするように
本当に届くもののためにだけ
一目散に伸びていきますように
わたしの短い寿命のなかで
できるだけ多くの目や耳をよろこばす
うれしい言葉でありますように
山と言ったら川と言うように
わたしがおかしくなったとしても
口をついて出るものであるように
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