夜に落ちる/かんな
ブランデーを喉にながす
こくりと飲み込んだうつつは儚い
床にぶちまけたこころの黒さは
いつのまにか天井になり
わたしを覆い隠した、ほし、星のようだ
眠れずにひとの温もりだけを求める
梅酒でほてりをしずめる
恋情を押さえ込んで身体をもて余す
冬が近づくから、ほら、ほらねと
谷川俊太郎のエッセイを読む
本はわたしをすくってくれる
窮地から救ってくれるのではない
抱えきれない情報を搾取してくれるのだ
恋がしたい、原点はそこにあり、
今も大きくは変わずにある
透き通った海にも一部の濁りがある
どんなに完璧に見せるひとにも短所がある
それが魅力というもので
わたしはいとおしさを感じて恋をする
夜に眠ろう
明日への誓いも立てず
逃げ出した一匹の子羊についての
思いを巡らせて、あなたを思考から
ゆっくりと外していけば、
夜に落ちる
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