の窓/竜門勇気
スロヴェニア史を
学んでいる老婆のくちばしに
十分な金貨を与えた上で射精した
爪を立てて俺の尻を掴む手を
振り払う素振りが水銀燈を揺らしてる
ねじ曲がってそれは悪魔に見える
樫の木の杖は水たまりに落ちている
その影も水たまりの中
たゆたう灰色の影を
肌色に散乱した光が覆って
全ての純粋さが
彷徨う魂を掬う網になる
全ての純血が
それを新しいノートに書き留める
古く 謎めいた知識を頼りに
いくつも窓を開けた時
それを覗く目も
触れる手も
持ってないことに気づくかもしれない
壁に開いた無数のドアの向こうが
どれだけ美しく感じても
壁に開いた無数の窓の景色が
どれだけもっともらしく思えても
どれだけ嘘くさく感じても
一つしか選べず
一つを選ばされ
それを抱いてでも生きていようと思うんだろう
他人がどう生きたか気になってしょうがなくて
他人が自分ならどうしたか気になって仕方がなくて
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