台風の夜の音重ね合わせて/
田中修子
雨のおとが体に刺さって下に抜けて行く
その先のまちで
男が酒を飲んで煙草を吸い
女が風呂に入り石鹸の香りを嗅ぐ
花は季節に散る
どうということもない
あたたかな食卓が
どれだけになって
成っているか知り
たったひとつだったはずの
歯車が噛み合わず
怒鳴り
泣き
それすらできないで
笑い
台風の夜
ぽたぽた
とたとた
ざんらざんら
ととととと
ぽんぽん
軽やかに秒が去る
水滴のようにね
その先、その先
そして秋が来る
戻る
編
削
Point
(12)