猿に似る/春日線香
日に日に猿に似てくるようだった
それは気のせいではなくて
よく来る人もなんだかそう見えるというし
近所の犬にはうるさく吠えられるし
どうも本当のことであるようだ
逃れられない運命であるならば
いっそ猿になりきってやろうかと
生の芋にかじりついてはみたものの
口の中には渋い味が広がるばかりで
猿になるのも至難の業だ
だがその日はいつか必ずやってくる
猿であることがまったくの自明であり
言葉も名前も溶け消えてしまい
ただ白い壁の前で口をもごもごさせるだけの
暑い暑い夏
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