未来の魚/為平 澪
 
父は生きる 沈黙の中に 
母は語る 夢のような言葉 
私は横たわる 足りない絶望を枕にして 
川の字になった 冷え切った水槽の中 
打ち上げられた魚を三匹 
飼って眺めて笑っていたのは 
水槽を覗くいびつな 
薄笑いの目 目 目 目 
金貨で競いたがる噂話 
コインで 家族を秤にかけた優越を 
父の呻き声がかき消して 
母のヒステリーが口から火を吐いて 
私たちの水槽がパシャリと軽い音で弾けた 
川の字なんて はじめからなかった 
まして 川で泳ぐ水すらない 
ただ 今度生まれ変わるなら 
人にさばかれる魚ではなく 
家族三人 一つの田に植えられた 
秋の稲穂になろう 
実がなるほどに 頭を垂れ 
人の糧となり 人を満たせる 
秋の夕陽に映えた 
沈黙の 幸せを握る 
金色の 稲穂畑の  
一粒にでも 
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