矢部川 借景/soft_machine
油まく模様のみなもには色々がくる
熟れた椅子の脚や膨らんだ仔ねこらが
うつした空を破りながら流れてき
こまをなくしたバイオリンなど
海にとどくより岩くぼに憩う
そろそろ沈むことなど気にもせず
鐘撞くに蜻蛉がとびたかく
観衆は満天の銀河レンズ
伴奏など要らない
みぎわにたつ葦
円もたかまれば
太古の風とかわきと月とが
水をおしたりひいたりする
これが別れた父のくちぐせだった
偶然いあわせた羽虫がその中へ這いいる
松脂があとすこしで琥珀にかわる
弓と語らったあまたのことぐさ
河原には枯れたみずくさ
いろ褪せたかわ蟹のぬけがらをふむ
はだかの少年の陽にやけた
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