◎漆黒の詩吟/由木名緒美
高の星と溢れかえるネオンサインを
わけ隔てなく愛するだろう
街路に傾斜した星座は欲望の道先案内人となり
地下の酒場に星は届かない
けれど西の最深を振り返り
ルームライトを消す時
彼らは黎明の環流に抱き寄せられる
そして衛星は抱き寄せるだろう
円環の正しい到来を
幾億の再臨を刻んだ地平が
反復ゆえの惰性の果てに
朝と夜を掛け違える黄昏の群青に
世界は目覚めるのかもしれない
月が己を燃やすために黒点を抱き寄せ
紅炎が駆け上る思慕を詩吟する
一度きりの銀河の歌合せを仰ぎながら
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