鏡の中には誰もいない/
春日線香
嘘か猫のようであろうとして
そのどちらにも失敗してしまった
こうなってしまってはもう
人さらいになるしかないと
人さらいの家に教えを請いに来たのだが
玄関から庭まですうすうと
透明な空気が筒抜けに流れるばかり
しんと静まった家で
恐ろしい人さらいにもなれず
この世から消えていく何かを
鏡に映して見ている
鏡の中には誰もいない
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