ひとり/soft_machine
 
なんてさびしいことば
ひとを構成する絶望の最小単位
あかい液体がつまったうすぅい袋
いくつもの器官で組み立てられた
地図上の手脚をひらく
ひとりはかわき谷をくだる
ひとりはついにいきあき石をわり
眠りにしずむひとり

誰といてもいつか退屈にそまるから
ひとのこころはその変わらなさを
求めあう束の間まるで競技のような
うばうさまざまな表情を粧う
かつての王らのふるまいを知るほどに
時をこえて訴えかける
すぎてゆく今を
ひざを抱えひとりたえ

マイルスやニーチェや漱石なみに過敏
ひとはひとに近づこうとするほどひとり
跫音で性格を分析するスパイのようで
おとずれたよろこびのあかりをあつめ
その影だけをじっと見つめる
夢やよいから覚めても
ひとはかなしい
ひとり


戻る   Point(1)