夏の片隅にいた/かんな
 


夏が終わりかけている。海を見ておもう。
寂しいような、青春の種火が消えるような気がする。

私はいつまでも視線を下げなかった。足元を見ればきっと、
夢に溺れてしまうからだ。持っていたペットボトルのキャップを

キュッとしめた。若い頃の過ちを閉じ込めるように海へ放り投げたくなる。
空が青い。最後の青さかもしれない。なぜかおもった。

ひとは煙草を吸いながら夕暮れのもの悲しさを想像する。
たとえば夜中、線香花火をするカップルについても考える。セックスを

する汗ばんだ肌をおもう。夏が欠けている。ふたりの間に絶対を用意する。
そうすることによって夜が確かな重さを帯びてくる。そういえば、

だれか気づいただろうか。
この夏の片隅にいたわたしを。





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