鳳凰詩篇/やまうちあつし
 
その人が孔雀になったと
連絡が入ったのは明け方のことだった
一晩中鳥の羽ばたきのような物音がするので
合鍵を使って部屋の扉を開けてみたところ
室内に人影はなく
孔雀がうろついていたという
管理人は弱りはてた様子
家賃も支払われていないし
動物を飼うこと自体禁止なのだと
私は礼を言いこの場は引き取ることに
さて、孔雀だ
これはやっぱりあの人なのだと思う
本人はどこかへ逃げたとか隠れているとか
考えられる可能性はあるにはあるが
そんなことはほとんどどうでもよかった
肝心なのは室内を孔雀がうろついていて
私がそこに呼ばれたということ
私は思い出していた
私とその人がこ
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