帰り道/葉月 祐
あなたと歩く
直径数十センチの
小さめな円の下で
あなたと語る
今日起こった
些細な出来事について
あなたとふたり
直径数十センチの
青い傘の下で
周りから少し雛れて
ふたりで歩いた
蒸し暑い午後の雨の中
穏やかな沈黙と共に
直径数十センチの世界の中
あなたとふたりきり
湿った空気と
防ぎきれない雨粒を
一緒に浴びながら
時折擦れ合う肌の熱に
心臓を高鳴らせて
少し横を向けば
それはふたり同時で
無言のままの数秒間
言葉も無いまま語り合う
互いに笑って その手に触れて
形無いものを 伝え合う様に
握りしめた 手と手
繋いだ手は思いのほか熱くて
ふたりして 笑ってしまった
照れ臭いけれど
それすらも嬉しい事
あなた 知っているでしょう
あなたとわたし
小さくてちょっと窮屈な
雨によく映える 青い傘の下で
多分あなたも
片方の肩 私みたいに
ぐっしょりなんでしょう
そうなんでしょう
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