水溶性/Lucy
 
れらは私を黒曜石のように
鋭く薄く尖らせた

ペーパードール
私がお前だった時
破れ目を繕うたびに
蟻のように言葉が書き込まれていった
薄く透明な私の皮膚に
纏いつき
浸食した夥しい蟻の群れ

憶えきれなかった
朝夕唱え続けることを強いられた経文
のように
私と蟻の僅かな隙間に違和が育まれ

破れてしまいたい
びりびりと
我が身を破く自我という観念
それとも自由
或いは絶望
それが観念である限り
解放しない
花園も田園も
山脈も
故国も
私の魂を吸い取り肉体を
粉々にしてくれる大地も

私の上にキラキラ注ぐ
陽の光
ふんだんに浴びて
流れゆく水
いにしえの私よ
既にどこにも存在しない
そんなにも恋い焦がれた人に
出会う前の








 (注  引用部分はM・フーケー作「ウンディーネ」より抜粋 )

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