Avenida 68 (藝術としての詩・続)/天才詩人
ついさいきんのことだった。」
数ヵ月たったある夕方、はじめてLの住む家を訪れた。曇り空の水滴がアスファルトの路面を湿らす、しずかな日曜日だった。午前中から、街のあちこちで彼女のバーゲン品探しに付き合い、そのあと何をするでもなく、ぶらぶらと「72」の近くまでやって来た。Lの家は、68号線から小さな路地をはいったところにあるコンクリートの3階建てで、このあたりでは目をひく建物だった。しかしLの家族は、建物の屋上部分に置かれた、廃品の市バス3台を改造した小さなスペースに住んでおり、その外側のパティオには観葉植物や洗濯物を干すスペースが所狭しとならんでいた。Lによれば、地上階の部屋の多くはアパートと
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