あの町とこの街/かんな
はり
ああやはりそうだったのか
あなたがあの町のあの家にあの時わたしを産み落とした瞬間から
わたしは厄介者であったのだと、恨んではいない
だってもうわたしはつけこむ余地がないほどしあわせなのだから
この街の空は格段に青いし雲だって透き通るように白い
死ぬことが誰にでも襲いかかるようにいたって怖くはない
外灯はこうこうと明るくすべての行き先を照らし出している
ものすごい幸福が空から落ちてきて掴み切れなかったとして
それでもこの街では誰もそれを不幸だって感じたりしない
海に沈む夕日に願えば叶うことだってあるのだ
母との電話を終えていや終える前から話は終わっている
思ったんだ
やはりそうしようと思ったんだ
あの町の話は母と俯きながらしよう
この街の話は夫と息子と顔をあげてしよう
くだらない単純なメソッドかもしれないが
わたしがわたしでいるために必要だから
スマートフォンを置くと
カーテンを開け窓を開けた
風が心地よかった
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